NVIDIAはCOMPUTEX 2023開催に合わせて、台湾オフィスにてプレス向け説明会を開催した。今回筆者が参加したのはコンシューマー向け製品のプレゼンテーション。同社のグラフィックボードGeForce RTX 40シリーズに搭載されている機能に関する説明会だ。新発表された情報ではないが、NVIDIAの最新グラフィックボードの進化点やアドバンテージについて解説を受けてきたので、レポートをお届けしよう。
デモ1:Higher Performance, Lower Power
最初に説明を受けたのが「DLSS 3」の優位性。DLSS 3はGeForce RTX 40シリーズでのみ利用できる、AIにより主にフレームレートを向上させる技術だ。DLSS、DLSS 2と進化し、2022年9月20日にDLSS 3が発表された。
今回のデモでは、GeForce RTX 3060 TiでDLSS 2、GeForce RTX 4060 TiでDLSS3を有効化し、「Cyberpunk 2077」を1080pで動作させており、前者では36fps前後だったところ、後者では74fps前後のフレームレートで動作していた。
注目に値するのが低消費電力性能。前者では190TGPのところ後者では138TGPと約73%のTGPで動作していた。ゲーミングノートPCでは動作時間延長にも寄与してくれるわけだ。
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左のPCにはGeForce RTX 3060 Ti、右のPCにはGeForce RTX 4060 Tiが搭載
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DLSS 3を利用できるGeForce RTX 4060 Tiのほうがフレームレートが高く、かつTGPが低いことがわかる
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デモ2:Low Latency Overwatch 2
eスポーツプレイヤーに向けて提供されているのが「NVIDIA Reflex」。これはシステム遅延を軽減するための技術で、GeForce RTX 30シリーズと同時に発表された。今回はGeForce RTX 4060 Tiが搭載されたPCでデモンストレーションが実施されており、「Performance Overlay」機能によりゲームプレイ中のレイテンシーを計測していた。
このなかの「Average PC Latency」が10msを切っていると非常にレスポンスのいいゲーム体験が得られるとのこと。今回のPCでは6ms前後を実現していた。
レイテンシーが低いほどプレイ時のダイレクト感が向上する。勝ちにこだわるのであれば、自分のシステムのレイテンシーを総合的に把握しておきたいところだ。
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デモ機にはGeForce RTX 4060 Tiが搭載。今回の説明会ではエントリー、ミドルレンジクラスのグラフィックボードが使われていた
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「Performance Overlay」に表示された各種レイテンシー。PC内部の遅延を示す「Average PC Latency」は6ms前後で推移していた
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デモ3:Over 1000Hz of Effective Motion Clarity
これはゲームの残像を抑える「G-SYNC ULMB 2」のデモ。液晶のバックライトを25%だけつけて、25%だけ消すというストロボ効果で、1000Hz相当超えの残像の低減効果を得られる。これにより、照準を合わせやすい、速い動きでも敵か味方かを判別しやすいというメリットがある。eスポーツでの勝率を着実に向上させてくれるはずだ。
昨今のゲーミングディスプレイでは2,560×1,440ドットで360Hzの製品も珍しくなくなっている。この解像度で360Hzのリフレッシュレートを生かすフレームレートを出すマシンを組むためには、よりパフォーマンスの高いグラフィックボードが必要となるわけだ。
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G-SYNC ULMB 2は1440p、360Hzの対応製品で利用できる。今回はASUSの「ROG Swift 360Hz PG27AQN」がデモ機として使用されていた
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左を144Hz、右を320Hzで動作させることで、滑らかさの違いを比較している
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写真ではぶれてしまっているが、実際に見ていると360Hzではキャラクターの上の文字もぶれずに、くっきりと読み取れる。正確にヘッドショットを決めやすくなる
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デモ4:AI-Enhanced Video Playback
この「RTX Video Super Solution」は今年2月にGeForce RTX 30シリーズ以降向けに提供された機能。Google Chrome、Microsoft Edgeでストリーミング動画を再生するさいにGPUがアップスケーリングしてくれる。今年の2月に公開されてからユーザーからの評価が非常に高いとのことだ。
実際本機能をオン、オフしたときの映像を見比べてみたが、明らかに解像感が向上していることに驚かされた。本機能はNVIDIAコントロールパネルで設定するが、デフォルトでは無効となっている。グラフィックボードの性能に余裕があるのなら、積極的に活用していきたい。
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今回は「エーペックスレジェンズ」のプレイ動画を再生しつつ、「RTX Video Super Solution」をオンオフして、その効果を体験してみた
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「RTX Video Super Solution」オフ
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「RTX Video Super Solution」オン。文字だけでなく全体的に解像感が大きく向上している
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デモ5:AV1 vs. H.264 Video Comparison
これはGeForce RTX 40シリーズに搭載されている新コーデック「AV1」を使ったデモンストレーション。AV1に対応した配信ソフト「OBS」を使い、1台のPCからAV1とH.264のコーデックでYouTubeに同時に2つのストリーミング配信を行なうというものだ。
これは画面を凝視するまでもなくクオリティーが段違い。AV1のほうが解像感は高く、そしてノイズも少ない。H.264が苦手とする細かなテクスチャーも綺麗に表示されていた。
映像配信において画質は重要。GeForceではRTX 40シリーズ限定で利用できる次世代コーデックだけに、映像配信の現場でグラフィックボードの置き換えが進みそうだ。
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右の1台のPCで配信ソフト「OBS」を使い、YouTube上にAVIとH.264のふたつのコーデックで映像をストリーミング配信している
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こちらはH.264でストリーミング配信した映像
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こちらはAV1でストリーミング配信した映像。AV1のほうが解像感は高く、ノイズも圧倒的に少ない。その差は歴然としている
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コーデックは配信ソフトのVideo Encoderから切り替えられる
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デモ6:DLSS 3 Multiplies Performance in D5 Render
最後に見たのがDLSS 3のクリエイティブ現場向けのソリューション。「D5 Render」というリアルタイムレイトレーシング3DレンダリングソフトがDLSS 3に対応し、設定項目に「DLSS Frame Generation」が追加。57fps前後のフレームレートで滑らかにプレビューできるところを確認できた。GeForce RTX 40シリーズのDLSS 3は、ゲームだけでなく、クリエイティブ系アプリケーションなどさまざまな分野に活躍の場を広げているわけだ。
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「D5 Render」をインストールしたPCでデモンストレーションを実施
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「DLSS Frame Generation」がDLSS 3を利用するモードだ
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DLSS Super Resolutionのフレームレートは16fps
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DLSS Frame Generationのフレームレートは57fps
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別室には最新のグラフィックボードが多数展示されていたが、すべてGeForce RTX 4060 Tiを搭載したモデルであった。発売されたばかりということもあるだろうが、今後の売れ筋としてNVIDIAが強くプッシュしている製品群であることを物語っている。
今回ブリーフィングを受けた技術は、GeForce RTX 40シリーズ限定、もしくはその性能が生きるものが多い。世代ごとのフラッグシップはたしかに高性能だが、そのぶん高価だ。最新世代のエントリー、ミドルレンジクラスのグラフィックボードを買い替えていくというのが、最新技術の恩恵をリーズナブルに受けられる賢い選択なのかもしれない。
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別室に展示されていた「ASUS Dual GeForce RTX 4060 Ti OC Edition 8GB GDDR」
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ほかに展示されていたグラフィックボードもGeForce RTX 4060 Tiのみ。売れ筋としてNVIDIAが注力しているのがわかる
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今回の取材に対応いただいたNVIDIAの澤井 理紀氏
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文: 撮影・ジャイアン鈴木
NVIDIA Corporation: https://www.nvidia.com/