エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1694
2026.09.22 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
CPUクーラーの有効スペースは、AMD環境が全高220mmまで。このサイズからハイエンド志向の空冷クーラーをチョイスするユーザーも少なくないだろう。特に同時期に発売された注目のサイドフロー型CPUクーラー、Cooler Master「V8 ACE 3DHP」シリーズの組み合わせは、High Air Flowのコンセプトにもマッチしている。なおエルミタでは詳細検証を行っているので、ぜひ参考にしていただきたい。
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エルミタで詳細検証を行ったCooler Master「V8 ACE 3DHP」シリーズ。ブラックの精悍なボディ色と、V8エンジンを模したヘッドカバーは相性がよく、国内外を問わずこれを組み合わせた多くの記事が公開されている |
とは言うものの、本稿ではトップに標準装備される「MasterRail」を活用すべく、あえて360mmサイズラジエーターを採用するオールインワン型水冷クーラーをチョイスした。用意したのは「MasterLiquid 360 Atmos II LCD ARGB」(型番:MLX-D36M-A25SZ-L1)で、エルミタでは以前同シリーズの詳細検証を行っているので、そちらも参考にしてほしい。
組み込みのしやすさはオールインワン型水冷クーラー側に依存する部分が多い。ただし今回の注目は「MasterRail」だ。まず360mmサイズラジエーターに搭載される120mmファンのネジピッチに合わせ、ベース部分を最も狭い位置に移動。スライド式ファン固定ブラケットをネジ穴に合わせてネジ留めを行う。
レールの範囲内であれば、ファン固定ブラケットは無段階に調節が可能。実質的に、どんなネジピッチのラジエーターでもジャストサイズでネジ留めを行うことができる。非常によく考えられたアイデアだが、一方で全てのネジ穴にファン固定ブラケットを合わせて行く作業は、こと重量のある長尺ラジエーターの場合、1人ではネジ留めがしにくい場面もあった。無段階は汎用性に優れているものの、位置決めの目安となるラッチが設けられていれば、よりスムーズに作業できるだろう。
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「MasterRail」の特徴は無段階で移動できるファン固定ブラケット。さながらカーテンレールのフックの要領だが、固定位置が移動する長所が”コツのいるネジ留め作業”にもなっている |
なおオールインワン型水冷クーラー搭載後のクリアランスは計測するまでもない。スリムなウォーターブロックは余裕をもって収まり、適度な長さのウォーターチューブもストレスなく配管できている。広い内部空間を活かしたパーツの収まりは良好で、組み込みやすさに不満はない。
最後にグラフィックスカードを搭載してみよう。検証には、NVIDIA「GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition」を用意した。カード長304mm、幅137mm、厚さ61mmで、3スロットを占有するハイエンドモデルだ。
HAF II 500のグラフィックスカード有効スペースは、長さ430mmまで。厚さは2枚挿しの場合で72mm(3.6スロット)、4枚挿しの場合は40mmまでとされている。ここまでのハイエンド構成は稀とはいえ、詳細な数値が開示されていることで安心して構成を検討できる。
搭載方法は、筐体内部から必要な枚数の拡張スロットカバーを外し、ハンドスクリューで固定する。GeForce RTX 4080 SUPER Founders Editionは3スロット占有カードのため、カバーを3枚外してしっかりと固定した。作業自体に難しさはないが、ネジ周辺は狭いため、先端がマグネット式のプラスドライバーを用意しておきたい。
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| PSUシュラウド左側面のカバーを外し、サービスホール経由で16ピン(12+4ピン / 12VHPWR)電源ケーブルを配線。これは思いのほか便利だった |
搭載後に残されたスペースを計測したところ、グラフィックスカード先端からフロント220mmファンまでは約130mmだった。公称値は430mmなので、カード長304mmのGeForce RTX 4080 SUPER Founders Editionを搭載した状態で、ほぼ数値通りのスペースが確保されている。ちなみに、グラフィックスカード底面からPSUシュラウドまでの距離は約95mmだった。
仕上げに、重量級グラフィックスカードを支える「GPU Support」を装着してみよう。今回は1枚挿しなので、グラフィックスカードの先端を上下から挟み込むように固定した。サポートアームの先端には、100mm幅でスライドできるラバーパッドを備えており、細かな位置調整が可能。複雑な形状のVGAクーラーでも、安定して支えられる位置を見つけやすい。
Cooler Masterの「HAF」といえば、優れたエアフローを追求してきた同社を代表するシリーズのひとつだ。最新モデルのHAF II 500も、購入直後から大風量の冷却環境を手に入れられるという狙いは非常に分かりやすい。
フロントに搭載された2基の220mmファンと、リアの180mmファンによる豪快な冷却レイアウトが、最大の[○]ポイントであることに異論はないだろう。いずれも市販のPCケースではあまり見かけない特殊サイズだが、それを単なる目新しさにとどめず、HAFシリーズが掲げる高冷却というコンセプトに合わせて標準装備している。多数の汎用ファンを追加することなく、箱から出した状態で強力なエアフローを構築できる意味は大きい。
そして、長さ430mmまでのグラフィックスカードや大型CPUクーラーに対応する広大な内部空間、重量級カードを支えるGPU Supportなど、ハイエンド構成を受け入れる準備も整っている。大風量の冷却レイアウトに見合った、内部設計のバランスの良さが際立った。
一方、[×]な部分は、奇しくも製品のウリである「MasterRail」だ。発想そのものはユニークで十分に[○]だが、実際に組み込みを体験すると、ブラケットの操作感や固定方法にはもうひと工夫が欲しくなる。また、ブラケットをフロントへ移設するとトップ側を利用できなくなるなど、運用上の制約もある。セールスポイントとして前面に押し出すのであれば、今回はあえて[×]とし、次世代でのさらなる熟成に期待したい。
過去を振り返ると、2022年7月に検証した「HAF 700 EVO」のレビューでも、「HAF」シリーズを“アメ車的なPCケース”と評した。その印象はHAF II 500にもそのまま当てはまる。細部は洗練されているものの、最後は大型ファンと広大な内部空間で真正面から押し切ってくる。この独特な味付けこそ、シリーズの魅力だろう。
静かにまとまった優等生ではなく、ひと目で狙いが伝わるPCケースが少なくなった現在、その存在感は貴重だ。目的が明確なHAF II 500は、確実に存在するハイエアフロー志向のニーズに応えた、待望の1台になっている。
提供:Cooler Master Technology

