エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1671
2026.06.16 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
Noctua製CPUクーラーを語る上で欠かせないのが、長年にわたって改良が続けられてきた独自マウントシステム「SecuFirm2+」だ。一般的にCPUクーラーのマウント機構は組み立てやすさや互換性が重視されるが、Noctuaは冷却性能そのものにも大きな影響を与える要素と考えている。組み込みが簡易的であれば良い、というものではない。
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| Noctua「SecuFirm2+」 |
その理由は、CPUヒートスプレッダとコールドプレートの接触状態にある。どれほど優れたポンプやラジエーターを採用していても、CPUから熱を受け取る最初の接点で熱伝達効率が低下してしまえば、本来の性能を発揮できない。
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| SecuFirm2+と標準マウントを比較した結果。接触圧の最適化によりCPU温度の低下を実現している |
SecuFirm2+は高い接触圧と安定した固定力を実現することで、コールドプレートとCPU表面を均一に密着させる設計を採用。さらにAMD Ryzen向けにはオフセットマウントも用意されており、CPU内部で発熱量が大きい領域へコールドプレートを最適化できる。後述するオフセットマウントは、その代表例だ。
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| 接触圧分布の比較。SecuFirm2+ではCPUヒートスプレッダとの接触面積が広がり、より均一な圧力が得られている |
Noctuaの資料では、こうしたマウント機構の最適化によって実際に温度改善効果が得られることも示されている。ポンプや冷却ファンだけではなく、CPUとの接触面にまで徹底的にこだわる姿勢は、同社の冷却哲学を象徴するものと言えるだろう。
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| CPUのホットスポットに合わせて取り付け位置を最適化するオフセットマウント。AMD/Intelの両プラットフォームで温度改善が確認されている |
冷却性能と静音性を支えるもうひとつの重要な要素が、搭載ファンだ。NL-LC1シリーズのうち「NL-LC1-24」「NL-LC1-36」の2製品には「NF-A12x25 G2」が採用されている。エルミタでは既に単体レビューを掲載しているため詳細な解説は割愛するが、Noctuaの最新世代120mmファンとして、空冷CPUクーラーやラジエーターファン用途を想定して開発されたフラッグシップモデルだ。
NL-LC1では、このNF-A12x25 G2をラジエーター向けに最適化して採用。高い静圧性能によってラジエーターを効率よく通風できるだけでなく、Noctua独自の「Speed Offset」設計も組み合わされている。
Speed Offsetとは、複数の冷却ファンを完全に同一回転数で動作させるのではなく、意図的にわずかな回転差を設ける仕組みだ。一般的に複数の冷却ファンが同じ回転数で動作すると、音響的な相互作用によって周期的なハミング音や共振が発生する場合がある。Noctuaはこれを抑制するため、冷却ファンごとにわずかに異なる回転数で動作する構成を採用している。
興味深いのは、これもまたNL-PNA1やPump Speed Profilesと同じ発想で設計されている点だ。Noctuaが目指しているのは単なる騒音値の低減ではなく、人間が実際に聞いた際の快適性向上である。ポンプの防振や音質改善だけでなく、ラジエーターに搭載される冷却ファンの動作にまで配慮することで、システム全体としてより自然な音響特性を実現している。
Emma V2、NL-PNA1、Pump Speed Profiles、そしてNF-A12x25 G2のSpeed Offset。NL-LC1シリーズは単一の技術で静音性を実現しているのではなく、ポンプ、マウント機構、冷却ファンそれぞれを最適化することで総合的な静音性と冷却性能を追求した製品と言えるだろう。
なお「NL-LC1-42」には140mmファン「NF-A14x25 G2」を搭載。いわゆる第2世代に移行した最新モデルで、設計思想はNF-A12x25 G2と変わらない。その点については詳細解説記事を参照いただきたい。

