エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1454
2024.09.04 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
次に電源ユニットを搭載してみる。用意したのはATX12V V3.0準拠の80PLUS GOLD認証モデルCOUGAR「GEX X2 1000 (ATX 3.0)」。120mmファンを内蔵し、奥行きを150mmに抑えたフルモジュラータイプの1,000Wモデル。FV270 RGBの電源ユニット有効スペースは奥行き250mmだから、搭載後のクリアランスは十分に確保できる計算だ。
搭載手順はシンプルで、ボトムカバーの右側面開口部より本体を挿入。後方から4本のインチネジで固定する。なお念のために計測した搭載後のクリアランスは、ボトムカバー前方まで実測で約185mmだった。計測方法が統一されていないため公称値とは異なるものの、空きスペースはいくらあっても困らない。これならあまったケーブルを比較的無造作に束ねて押し込んでおくこともできそうだ。
ボトムファンブラケット(天板)を外せば、モジュラーコネクタにケーブルを接続した状態の電源ユニットにアクセスが可能。コネクタケーブルの抜き挿しができる言わば”サービスホール”的存在 |
CPUの冷却には360mmサイズラジエーターを採用するオールインワン型水冷ユニット、COUGAR「POSEIDON ELITE ARGB 360」(型番:CGR-PSDELRGB-B-360)を使った。
製品を簡単に説明すると、水冷ヘッドは回転可能なインフィニティミラーデザインを採用。ラジエーターは幅121mm、長さ392mm、厚さ27mmで、120mm ARGBファンを3基搭載。チューブ長は400mmとされる。
インフィニティミラーデザイン採用の水冷ヘッド。設置方向に合わせてヘッド部は回転する仕様。外形寸法は82.9×73.3×50.7mmで、当然ながら高さ制限を気にする必要はない |
2本のネジで固定された天板は取り外しが可能。360mmサイズラジエーターは、PCケースの外部でネジ留め作業を行う事ができる。これなら誤ってマザーボードにネジやドライバーを落とす等のトラブルを未然に回避できる。なにより広い場所での作業は、明らかに効率がいい。
天板のネジ穴は搭載ポジションの調整ができるスリットタイプ。特にラジエーターの場合、周囲に干渉しない箇所に設置できるメリットは大きい |
120mm ARGBファンを3基搭載した長尺ラジエーターも干渉せずに固定が可能。フロントから左側面までが開放状態だけに、水冷ヘッドのネジ留め作業もスムーズに行うことができた。搭載のし易さはAIO水冷側の設計にも依存するが、総じてFV270 RGBの広い内部容積は組み込み易さに大きく貢献している事は間違いない。
ミドルタワーPCケースながら広い内部容積のFV270 RGBには、ハイエンド志向のグラフィックスカードが似合うはず。そこで搭載テストには3スロットを占有するNVIDIA「GeForce RTX 4090 Founders Edition」を用意した。外形寸法は幅137mm、長さ304mm、厚さ61mm(メーカー公称値)で、グラフィック性能はもとより、迫力ある見た目はFV270 RGBに見劣りしないだろう。
拡張スロット金具のネジを真上から締め付けるには、スリットタイプのサービスホールを利用する |
スペック表をもう一度確認すると、FV270 RGBのグラフィックスカード有効スペースは420mm。ただし右サイドファン部分にラジエーターを設置した場合は330mm、垂直設置時は450mmとされるので、構成パーツをチョイスする際には知っておきたい数値だろう。
さて、搭載作業については開口部が広いこともあり、重量級の体躯を感じることなくスムーズに進行。ケーブル接続作業も難なく完了できた。なお搭載後のクリアランスはフロントパネルまでが実測で約180mm。ただしオプションの回転台に背の高いフィギュアを設置する場合は、長さ300mm程度のグラフィックスカードがオススメだ。
最後にFV270 RGBの遊び心「FV270 LUMINOUS ROTATING PLATFORM」を取り付けてみよう。搭載手順は容易で、標準装備品のフロントボトムファンのユニットを外し、回転台ユニットを装着するだけ。もう少し詳しく説明すると、フロントボトムファンのユニットは手前をプッシュするだけでロックが解除され、給電はポゴピンにより配線も不要というワケだ。なおボディ色に合わせ、ブラック(型番:CGR-58M6B-LRP)とホワイト(型番:CGR-58M6W-LRP)が用意される。
パッケージサイズは幅200mm、奥行き270mm、高さ94mm。付属品は無く回転台ユニットのみで完結。取り付けもフロントボトムファンと換装するだけの工具いらず |
PCの電源と連動して淡く発光。耐荷重1kgの回転台はゆっくりとしたスピードで回り続ける |
ピラーレスデザインPCケースはコンセプト自体の主張が強く、一気にブームに火が付いた。一方でどれも同じようなモデルに見えてしまうのは筆者だけだろうか。すでに価格もこなれた本格的普及期に入り、やや停滞気味な感も否めない中に投入されたのがFV270シリーズだ。
前寄りに絞り込んだスタイルはオリジナリティが溢れ、さらに傾斜を設ける攻めのデザイン。カーブを描くフロント強化ガラス越しにオプションの回転台を設置すれば、お気に入りのフィギュアが円形ステージ上で動き続ける。この説明だけでは危うくイロモノ扱いだが、内部構造はハイエンド構成を見越したクリアランスと、背面コネクタマザーボードにも十分対応する裏配線スペースを確保。歴とした最新自作PCのトレンドを取り入れた、イマドキの佳作として「○(マル)」をあげたい。
一方で「×(バツ)」は重量だ。いかんせん重い。はたして重い。恐らくCOUGARは厚い鉄板で重厚なPCケースを作ろうとしたのだろう。現在のコンシューマ向けPCケースのほとんどは作りが良く、決して”軽量と華奢”はイコールではない。空の状態で約15kgはさすがにやり過ぎだろう。洗練された外観デザインに見合う、スマートな一面も見せてほしい。
提供:COUGAR
株式会社アユート