エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1661
2026.05.11 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
CPU冷却には、オールインワン型水冷ユニットを用意した。搭載テストに使用したのは、Antec「VORTEX LUM 360 ARGB WHITE」だ。
360mmサイズラジエーターは、トップ部のスリット式マウントホールにより、固定ネジをすべて使用できた。なお、搭載後はトップパネルをメッシュ仕様のダストフィルターへ交換して運用する形になる。
内部へ目を向けると、直径67mm、高さ48.5mmのウォーターブロックは、小型トップフロー空冷クーラーに近いサイズ感。ウォーターチューブの取り回しにも無理はなく、比較的余裕を持って配管できている。
なお、チューブ方向を前方へ向けたのは、リア120mmファンとの距離が近いためだ。ちなみに360mmラジエーターの外形寸法は、幅120mm、奥行き397mm、厚さ27mm。ここへ25mm厚120mmファンを3基組み合わせることになる。
実際にトップ部へ組み込んでみたところ、出荷時状態ではラジエーターがリアファンへわずかに干渉し、そのままでは固定できなかった。しかし、スリット式マウントを採用するリア120mmファンの位置を最下段まで下げることでクリアランスを確保。干渉を回避し、問題なく搭載できた。
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| 360mmサイズラジエーターの奥行きは397mm。トップパネルへのインストールにはリアファンを若干移動する必要があった | |
ちなみにP7Sは、魅せる要素よりも静音性や落ち着いた外観を重視したコンセプトのPCケースだ。そのため、ARGB LEDイルミネーションやLCD搭載ヘッドなど、ビジュアル面を強く訴求するAIO水冷ユニットとは、やや方向性が異なることは否めない。
とくに近年は、演出機能の充実に伴って価格が上昇しているモデルも多く、P7Sのようなコストパフォーマンス重視のPCケースと組み合わせる場合、バランスを意識した製品選びも重要になるだろう。
一方で、シンプルなデザインを採用したベーシック志向のAIO水冷ユニットは、P7Sの世界観とも相性が良い。せっかくのイルミネーションやLCD表示が完全に隠れてしまう点も含め、導入前には一度整理しておきたいポイントだ。
検証には、NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER Founders Editionを用意した。厚さ61mmの3スロット占有仕様で、カード長は304mm、幅は137mmとなる。搭載手順としては、まず背面側からハンドスクリュー1本で固定された拡張スロット化粧カバーを開き、必要数となる3枚の拡張スロット金具を取り外す。そこへグラフィックスカードを挿入してネジ固定を行い、最後に化粧カバーを元へ戻せばほどなく搭載は完了する。
続いて、16ピン(12+4ピン / 12VHPWR)電源ケーブルを、PSUシュラウド天板の左サイドパネル寄りに設けられたスルーホール経由で接続。これでグラフィックスカード周辺の組み込み作業は完了する。
P7Sのグラフィックスカード有効スペースは405mm。カード長304mmのGeForce RTX 4080 SUPER Founders Editionは余裕を持って搭載でき、フロントパネルまでの距離も実測で約100mmを確保できた。公称値に近いクリアランスが確認できた格好だ。
近年のPCケース市場は、ピラーレス構造や強化ガラス、ARGB LEDイルミネーションを軸にした“魅せるPC”が主流になりつつある。その中でAntec「P7S」は、あえて静音性と実用性を重視した、クラシカルなミドルタワーPCケースとして登場した。
しかし実際に触れてみると、単なる“昔ながらの静音ケース”では終わっていない。トップパネル換装によるエアフロー特性の変更や、柔軟な冷却ファンレイアウト、高い組み込みやすさなど、現代的な要求へもしっかり対応していることが分かる。ここはP7Sの「○」な部分と言えるだろう。
一方で、「×」な部分は魅せる要素がほぼ存在しない点だ。現在の自作PC市場ではARGB LEDイルミネーションやLCD搭載ヘッドなど、ビジュアル面を重視したPCパーツが主流になりつつあるだけに、そうした製品群とは方向性が大きく異なる。視覚的な演出を重視するユーザーにとっては、物足りなさを感じる可能性もあるだろう。このコンセプトへ魅力を感じないのであれば、P7Sは優先順位の高い選択肢にはなりにくいかもしれない。
そして興味深いのは、P7SがAntec「P30 ARGB」「P30 AIR」と共通筐体を採用している点だ。つまり、既存プラットフォームをベースに静音性重視へ再構成したバリエーションモデルという側面も持つ。
しかし実際に触れてみると、単なる派生モデルという印象は薄い。遮音パネルや防音材の追加、トップパネル仕様の変更など、静音PCケースとして必要なブラッシュアップは丁寧に施されており、完成度は高い。
結果として、実績ある内部設計を流用することで開発コストを抑えつつ、市場想定売価税込11,480円という価格を実現している点は大きな魅力だろう。派手さよりも実用性を重視し、静かで扱いやすいPCを組みたいユーザーにとって、P7Sは本命候補になり得る1台と言えそうだ。
提供:Antec
株式会社リンクスインターナショナル
