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 Home > エルミタ的「一点突破」 CPUクーラー編 Vol.2 「Thermalright Venomous X」検証
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冷却能力(温度)、騒音値、回転数テスト

 「Venomous X」に「KAZE JYUNI」PWM可変ファンを搭載し、CPUクーラーの体をなした所で
冷却能力テストを開始する。搭載ファンの性格上、前回同様にPWM可変最小帯域時および最大帯域時の2パターンでそれぞれを計測。テストには「OCCT 3.1.0」で100%負荷状態を作り、「SpeedFan 4.40」で回転数および温度状況をチェックしている。ちなみにBIOS読みの温度/回転数表記と「SpeedFan 4.40」の誤差に関しての疑問もあるが、アイドル時での比較ではほぼ同じ数字が出ていた。

Venomous X
Venomous X
※それぞれ比較はIntel Core i5-750純正クーラーでの測定結果



デュアルファンでの温度変化を計測してみる

 「Venomous X」では12cm Fan Wire Clipが2基分同梱されており、120mmファンを増設搭載させて冷却を強化する事ができる。そこで今回は手持ちの1200rpm(20.51dBA/49.97CFM)汎用ファンを排気側(吸い出し)に装着し、テストを行ってみた。
 テスト前の時点で結果を想像すれば、吸気(吹きつけ)+排気(吸い出し)のエアフローレイアウトを採ることでヒートシンク最大幅63mm(公称値)の風の流れが速くなるはずだ。さらに違う言い方をすれば、コア部分から吸い上げた熱が素早く排出できるという事になる。ここからはその効果の程を確認して行きたい。本当に効果はあるのだろうか。


Venomous X Venomous X
シングルファン搭載時(画像左)とデュアルファン搭載時(画像右)の「Venomous X」。さすがにファンを2基搭載させるとアングルの問題もあるかもしれないが、ATXマザーボードがMicroATXサイズに見えてしまうほどの存在感。改めて見ると、CPUは本当に発熱する面倒な構成部品だなと痛感する

Venomous X
Venomous X
※それぞれ比較はIntel Core i5-750純正クーラーでの測定結果

 室温17℃の環境下でのデュアルファン計測は、予想通り良好な結果となった。温度計測では最小帯域設定でアイドル時、高負荷時共に-3℃最大帯域設定でアイドル時、高負荷時共に-2℃の冷却能力向上で、強制排気スピードを高める効果はあるようだ。
 一方、騒音値はなぜか何度計測しても最小帯域設定/アイドル時の計測で、回転数は低いながらも数値は上がっている。ただしこれは許容範囲内という事で、このレベルの違いであれば問題にするほどでは無いだろう。
 なお計測前、ファン同士の距離が短いため、排気側(吸い出し)のファン回転数が若干乱れるのではないかと予想していたが、この程度の風量ではその影響は無く、1200rpm仕様でBIOS読み/1261-1240rpmの範囲に落ち着いている。



ヒートシンク各部の温度計測

Venomous X 次に「Venomous X」ヒートシンク各部の温度計測を実施した。計測ポイントはファンから遠い上部@、B、下部C、D、さらに上部センター部、Eのベース部上の計6箇所。測定範囲(D/S比)11:1の非接触型放射温度計を使用。ここでは各部位の熱の伝わり具合等が分かるだろう。

  @ A B C D E
アイドル時最小帯域時(℃) 17.8 18.3 18.6 20.5 27.4 21.9
アイドル時最大帯域時(℃) 17.6 18.5 18.0 18.8 19.4 18.8
100%負荷最小帯域時(℃) 25.6 22.4 20.7 27.4 27.3 24.9
100%負荷最大帯域時(℃) 18.4 17.9 19.9 20.4 23.5 21.8
※BおよびDはグラフィックスカード側

 今回のテストは、なぜか若干のばらつきがあった。5回のテストでの平均値を採っているが、最大で5℃の差が出る事もあり、常に一定の状態を作り出すことの難しさを痛感。とは言え、傾向はこの数字から読みとることができるだろう。
 各々の結果は表を見て頂くとして、ここで注目したいのはDのヒートシンク下部(VGA側)の数値だ。アイドル時/100%負荷時共に最小帯域時では27℃台にまで上昇してしまう。1列目の結果を見ると、同じヒートシンクでありながら、@17.8℃に対しD27.4℃となり、10℃弱も温度差がある。どうしてもGPUと隣接する部分はその影響を直接的に受けてしまうようで、グラフィックスカードに高負荷のかかるアプリケーションの長時間使用頻度が高いユーザーは、その点を留意したい。



念のため。ファンレス稼働の意味と成熟した市場

 CPUクーラーは数年前に比べ、かなり成熟されている。至極当たり前だが、ここで言う「成熟」とはCPUクーラーの能力ではなく、市場の認識を指す。
 ほんの数年前ならば、大型(120mmファン以上搭載タイプ)サイドフロー型CPUクーラーを見ただけで「ファンレスで行けるかもしれない」とコアな自作ユーザーであれば一度は想像し、またはチャレンジした事があるだろう。ただしこれはあまり意味が無いという認識に落ち着きつつある。
 もちろんCPUクーラー自体をファンレスにしたところでケース内部のエアフローを考慮しなければならず、純粋なファンレスでは無い事、さらにファン自体の静音性が高く、より安定稼働ができるCPUクーラー本来の性能を十分に発揮させた方が良いという判断に他ならない。
 さらに言うまでもなくケース内に搭載させた前面吸気、背面排気に加え、CPUクーラーに装着された静音ファンを1基増やすことで、騒音値は1+1+1にはならない。つまり20dBAのファンを3基内蔵させたところで60dBAではなく、十分に静音PCを構築する事ができてしまうというワケだ。
 最近ではメーカーも「ファンレス稼働」に際しての“お断り”をわざわざ明記しなくなってきている。これは市場が成熟したひとつの証拠と言えるだろう。もちろん「Venomous X」でもファンレス稼働等は考えず、普通に使用した方が良い事は言うまでもない。



総評 「一貫して“らしさ”を失わないところが人気の秘訣」

Venomous X
外装パッケージ側面には製品詳細が日本語で記されている
  今回テストを行ったThermalright「Venomous X」の総合評価ポイントは18.0とした。ただしこれには注釈が必要となるため、誤解無きよう個別にその理由を見て行きたい。

  まず「静音性」(5.0)だが、これは参考値。そもそも「Venomous X」はファンは任意選択モデルで、同梱されていない。今回はScytheの「KAZE JYUNI」のPWM可変帯域が変更できる120mmファンを使用しているため、本来であれば「KAZE JYUNI」の評価と解釈すべきかもしれない。よってここでは放熱フィンとエアフローの関係での評価となっている。
 この部分を追求すると、色々なテストを行わなければならないため、近いうちに番外編としてお届けしようと考えているのだが、放熱フィンの長さ(幅)とフィン自体の厚さ、そしてフィン同士のピッチにより、風の抜ける音が微妙に変化する。これをヒートシンクの「個性」と考えておしまいとする事もできるが、同一ファンで色々なヒートシンクに装着してみると、騒音値にばらつきが出る事が分かる。これを「マッチング」として考えた場合、「Venomous X」と「KAZE JYUNI」は比較的相性が良かった。

 「冷却性能」(5.0)についてはテスト結果を見て頂ければ分かる通り“申し分無し”と言える。さらにデュアルファン搭載にすると、ファン個数に比例した結果も出ており、ヒートシンクのレスポンスの高さが窺える。さらに数値は未掲載ながら、100%負荷状態からアイドル状態に戻った時のコア温度の低下スピードが非常に速かった。CPUクーラーはこのようにレスポンススピードが重要で、車のエンジンと同じく、キビキビとメリハリがつくモデルは扱っていて面白い。よって満点の5.0とした。

 「取り付け易さ」(4.0)は工作精度の良さに比重を置くならば満点だが、ここは部品点数と台座を作るまでの工程が面倒と感じるユーザーの気持ちを代弁する事にした。
 頻繁に付け替え作業を行うものではないが、純正クーラーの搭載方法を考えるとやはりマイナス評価が必要と思われる。
 とは言え、相反するような事を敢えて言えば、この(一見)複雑な工程からはさすがに確実な密着ができることが容易に想像できる上、Thermalrightの工作精度の高さ、そして作る過程が好きな自作マニアには垂涎とまでは言わずとも、気持ちの良い“カッチリ感”を味わう事はできる。ただし気が短い人や、お急ぎの方(?)にはとても勧められない。どんなユーザーの要望にも応えるという姿勢は、お金を出して買う価値のある製品には必要だろう。(Thermalrightが初心者お断りと言うのであれば話は別)

 最後に「コストパフォーマンス」(4.0)について、ここでも満点は出せなかった。
 「価格」と「能力」のバランスを冷静に見た場合、評価基準は“よく冷えて手頃な価格”になるはずだ。“よく冷えて”については、「冷却性能」で満点だが、お世辞にも“手頃な価格”とはさすがに言えないだろう。ただしこれは使用用途によって認識にばらつきが出る事は確かだ。
 各々の使用環境で想像以上に良く冷えれば、高い価格という不満が出る事は少ないだろう。ただし対象となるCPUによっては、冷却能力の高さが災いし、オーバースペックになる可能性がある。CPUクーラーの仕事は冷やす事であり、オーバースペックという言葉には違和感があるかもしれない。ただし誤解を恐れずに言うならば“冷えて安い”事に文句を言うユーザーは少数であり、コストパフォーマンスの定義からすれば、満点を出すわけにはいかないという事である。

Thermalright 「Venomous X」総合評価
評価
総合評価

 Thermalright 「Venomous X」は相変わらず“Thermalright”という印象で全てのテストは終わった。というのも同社が国内初上陸した頃からリリースされてきたモデルを試してきたが、ライバルに比べて工作精度の高さには一日の長がある。
 冷却能力の高さと工作精度はイコールになる場合がある。試しに店頭にあるサンプル品を手に取って、(常識的な範囲で)CPUクーラーを少しねじってみて欲しい。Thermalrightのモデルの高い剛性が分かるはずだ。ここで何が言えるかといえば、ヒートパイプと放熱フィンの密着度で、ここがしっかりしていなければ、熱の伝達ロスが生じ、いくら表面積が広くても良いパフォーマンスは生まれない。Thermalrightの価格に隠されたものは、この辺りにもあるのではないかと考えている。
 中速から高速クラスのファンを取り付ければ、まだまだ冷却能力が引き出せるだろう。玄人ウケする広い糊代を持ったCPUクーラーであった。

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機材協力:株式会社サイズ
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Venomous X
・サイズ:127×63×H160mm(クーラー本体)
・対応ファン:リブ無し120mm(別売り)
・対応CPU
Intel LGA775/1366/1156
・ヒートパイプ径 6mm径×6本
・本体重量:755g
・付属品
グリス、図解入り英語マニュアル、ファン固定用クリップ×2セット
・パッケージサイズ
220×175×113mm/1310g
・実勢価格税込8,000円〜9,000円前後
(2010年3月現在)
メーカー製品情報
 
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