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ファンコントローラー再考 〜ファンコンは時代と共に移り変わる〜

2009年6月9日
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  ドイツNesteQから8chファンコントローラー「NesteQ FanMax 8-Channel Fan Controller」がリリースされた。単純な6V〜12V間を制御するボリューム式ファンコントローラーで、8個のファンを任意でコントロールできる5.25インチ内蔵型モデルだ。

 NesteQ FanMax 8-Channel Fan Controller
 http://www.nesteq.net/gb/products/fancontrollers/fanmax/index.html
 
 確かにケースに搭載できるファンの数は増えているとしても、仮にすべてのチャンネルにファンを接続したところで、筆者の場合「どのファンがどのチャンネルだったっけ?」となるのがオチだ。それに1スロットでスマートなフロントマスクとは裏腹に、楽屋裏である背面はケーブルだらけに。想像以上に雑然とした状況になる事は明白であり、どこまで需要があるのかと疑問に思いつつ、仕様書等を眺めていた。

 需要といえば、以前に比べてファンコントローラーの元気がどことなく無くなっているのではないだろうか。確かに今でも数々のモデルが存在し、そこそこの出荷量はあるだろうとは思う。ただし、どこか一昔前とはファンコントローラーの立ち位置が変わってきているのではないかと感じるのである。

 そこで今回は、単純な抵抗で制御するタイプからコントローラーチップが搭載されたモデル、さらにはアナログメーター搭載モデルまで、これまでに数え切れない程市場に投入され、間違いなく一時代を築いた“ファンコントローラー事情”について少々考えてみたい。


■ファンコンブームの立役者だった、システムテクノロジーのSTシリーズ

 古くからファンコントローラーは存在していたものの、静音ブームに乗って彗星の如く登場し、自作界での市民権を得た功労者といえば、有限会社システムテクノロジー(東京都港区)の「ST-01」からなる同社のファンコンシリーズだろう。

  有限会社システムテクノロジー製品情報
  http://www.system-j.com/product/fancon/fancon.htm

 同社のWebサイトに今も残る「ST-01」「ST-02」は、2001年8月にリリースされた国産モデルで、前者はシリアルポート取り付け穴固定タイプ、後者は拡張バス取り付けタイプで、単なる抵抗によるボリューム式ではなく、FETとPWM変調を使い、電圧を制御するという、当時コンシューマ向けとしては最先端の技術が使われていた。

  この時代すでに“PWM”という言葉が使われている所に同社の技術力を感じるが、少々補足すると“PWM”とはパルス幅変調の事で、以前から主にサーバー系のシステムボードには搭載されており、一般的に認知されだしたのは「ST-01/ST-02」発売から3年後、PC業界最高レベルといえる負の遺産となった「BTXフォームファクタ」が登場した2004年頃となる。

BTX Cooler
BTX Cooler(画像は山洋電気社製)
  今でこそ当たり前となったPWM可変式ファン(いわゆる4pinファン)は、トンネル形状のカバー付きBTX用クーラー(Type1、Type2)や、BTX以外ではPWMファン初搭載となったクーラーマスターの「Hyper 48」がリリースされ、本格的なPWM可変式ファン時代の幕開けとなった。
 このように、システムテクノロジー社の「ST-01」「ST-02」はリリースの2001年当時、かなり革新的な技術が使われていた事が解るだろう。

  なお同社のファンコンシリーズはその後、3.5インチ内蔵、5.25インチ内蔵の「スーパーファンコントローラー Ver.2」とされる2ch制御「ST-24/ST-25」シリーズ、さらには「スーパーファンコントローラー Ver.3」の4ch制御「ST-35」シリーズへと進化したが、いつしか惜しくもフェードアウトの状態となってしまった。


■Intel Prescott特需だったファンコントローラー最盛期 

 さて、ファンコントローラーの必要性はそもそも何がきっかけだったのかを考えてみると、恐らくは自作好きの多くが、自ら魂を注入したPCを自分の手で制御したいという欲求、そして至極当たり前の事を言えば、“必要にかられたから”ではないだろうか。ではその必要性を考えてみると、やはりPrescott抜きには語れないだろう。

Prescott
PrescottコアのPentium 4
  90nmプロセスルールのPrescottとは、ご存じIntelのPentium4 2.8E GHzで登場するコアだ(2004年2月)。特にクロックが3GHzオーバーになり、それまでのNorthwoodから切り替わったあたりでTDPが上昇。ついにTDPは100Wを超え、高回転数のCPUクーラー(ファン)が必要になってきてしまった。

 そのころ盛り上がりつつある静音ブームとは相反した招かざるPrescottの登場で、高回転=騒音値の高いリテールクーラーが付属される事になり、この耐え難い騒音値をなんとか抑え込もうとした手段として、ファンコントローラーの需要がさらに高まる事になる。

 ただしリテールクーラーとは、本来そのプロセッサが必要とする(動作を保証する)スペックを持ったヒートシンクとファンから構成されているため、無理に回転数を落とす事で熱焼損のリスクが伴う事になるがそこは自作の醍醐味、ユーザーは騒音値と格闘を始めたのである。

Thunderbird
ThunderbirdコアのAthlon
  ここで忘れてならないのが、AMDのThunderbirdを初めとするSocket 462勢の存在だ。 Intelのそれに比べ、熱に対しては敏感なプロセッサであった一連のモデルは、「焼き鳥」などと揶揄されるほど、熱焼損による自作ならではの“事故”が多発した。(コア欠けも非常に多く、CPUクーラーのテンションの掛け具合で簡単にコアの角が欠け、筆者も泣かされ続けた)

 Intelのプロセッサよりもリスキーで、どこかハードルの高かったAthlon勢だが比較的安価で、所謂“L1クローズ”等自作ならではのチャレンジができる事でも人気があった。ただし、Intelプロセッサに比べ、前述のもろさも手伝って、CPUクーラーの騒音値問題よりも、本来の役割である冷却にウェイトが置かれ、ファン回転数制御については、Intelプロセッサほどの要求は低かったかもしれない。


■ファンコントローラーの「名機」あれこれ 

 少々昔話が過ぎたので、ここでは記憶に残るファンコントローラーを振り返ることにしよう。(結局また昔話となるが、、、)なお以下モデルの多くはすでに製品情報のURLが消えているため、詳細URLは割愛とする。


・斬新で人気を集めた3連アナログメーター搭載「Musketeer」

  非常に斬新な3連アナログメーターが搭載されたクーラーマスター「Musketeer」(2003年8月発売/実勢価格約5,000円)は、1chファンコントローラーだった。3つあるバックライト搭載のアナログメーターは“電圧/音圧/温度”を表示し、0〜12Vの電圧コントロールを縦にスライドするスイッチによって操作する。アナログメーターといえば右左に針が常時振れるというイメージだが、「Musketeer」は状況如何で音圧メーターは微かに動きつつ、電圧および温度はほぼ固定状態になる事から、動的アクションが思ったよりおとなしく、一部では期待はずれだったという声もあったが、リリース直後は爆発的な売れ行きを見せた。


・トグルスイッチがカッコイイ、ZALMAN「ZM-MFC1」とロングセラーの「FAN MATEシリーズ」


 ZALMANの「ZM-MFC1」は、5.25インチ内蔵型の6chファンコントローラーで、4chはボリューム式、残る2chは+12V/off/+5Vの3つの切り替えができるトグルスイッチが採用されていた。トグルスイッチが搭載されている事で無意味に“カッコイイ”と支持を得たが、搭載のBlueLEDが異常に眩しく、目を細めながら操作した記憶がある。発売は2003年3月で、実勢価格は約5,000円。なおこの後「ZM-MFC1 Plus」という6chタイプが発売されているが、トグルスイッチは採用されなかった。

 またZALMANで忘れてならないモデルが「FAN MATE 2」だろう。電圧調節型のボリューム式ファンコンで最もシンプルな部類となる。
  L70x W26x H26mmのコンパクトな通称「FM-2」は、単体発売だけではなく同社CPUクーラーの多くに付属される事になった。任意設置型で、ネジ共締め用穴が用意されている他、マジックテープでケース内の空きスペースに貼り付けての使用となる。ただし、ケース外での使用は考慮されていないため、回転数を変える場合はサイドパネルを外す必要があり、どちらかといえば任意回転数に固定して、サイドパネルをパタと閉めてしまっての使用が本来の使い方のようである。

Musketeer ZM-MFC1 FANMATE-2
クーラーマスター「Musketeer」の斬新な3連アナログメーターのデビューは衝撃的であった 4chボリュームと2chトグルスイッチで個人的には好きだったZALMANの「ZM-MFC1」 簡易ファンコンで人気の「FANMATE 2」は多くのZALMAN CPUにバンドルされた
HARDCANO 9 NXP-201 SF-609
ThermalTakeの「HARDCANO 9」(A1659)は5.25インチベイ内蔵型でLCDパネル付き4ch制御(2003年8月発売/実勢価格5,000) 5.25"内蔵型4ch「NEXUS NXP201」(2003年1月発売/実勢価格約5,000円) SUPER FLOWER「SF-609」は、4ch制御で、LCDは7色のバックライト、5色の交換ベゼルが付属した(2003年7月発売/実勢価格約7,000円)
NXP-205-SL OWL-BRA9010 FC-01
VANTEC「NXP-205-SL」は、3.5インチベイ内蔵の4chファンコン(2003年7月発売/実勢価格4,000円) 3.5インチ内蔵のオウルテック「OWL-BRA9010」は、L/M/Hの3段階スイッチにボリュームスイッチを組み合わせ、4個のファンを同時制御する(2003年3月発売/実勢価格2,300円) AINEX「FC-01」は1chファンコンで、任意箇所に設置するシンプルな製品(2002年7月発売/実勢価格980円)


・拡張ブラケット固定型ファンコントローラーのいろいろ

 ファンコントローラーは「FANMATE 2」同様、なにもドライブベイに固定するタイプだけではない。
 2005年11月に発売された、Sunbeam「TP-101」は、拡張ブラケット固定の1Slot仕様8chファンコントローラーだった。バスインターフェイスの拡張カード風の基板は、USB接続でデータをやり取りし、付属のユーティリティソフトウェアによって回転数制御および回転数等のモニターを可能とした。なお実勢価格は5,000円前後。

  最もシンプルな拡張ブラケット固定型となるThermalTake「A1268」は、3段階切り替えスイッチが搭載された電圧変更型モデルで、2003年4月に登場している。ちなみに“それだけ”の機能で、実勢価格は2,000円前後。今だったら叱られてしまうような価格設定であった。

TP-101 A1268 DT-4100
拡張ブラケット固定タイプの8chファンコントローラー、Sunbeam「TP-101」 ThermalTake「A1268」は当時2,000円もした 拡張ブラケット固定の2chタイプ「DT-4100」は2004年登場以来のロングセラー


・実用品からアクセサリー的な立場となったファンコントローラー

 たいへん大雑把にな紹介で恐縮ではあるが、あまりにも種類が多く、正直収拾がつかなくなってきている。というわけで、この辺りで“現代の”ファンコントローラーを確認してみたい。
 その前にひと言付け加えるならば、これまでの変遷をみて行くと、「実用品」から「アクセサリー」的要素が非常に濃くなってきている事に気が付く。CPUクーラーのファン回転数制御だけで言えば、PWM可変が格段に良くなり、当初訝しげだったユーザーからも認められた存在に格上げされ、これに関しては別途ファンコントローラーを無理に増設しなくても良いというジャッジが下されたのかもしれない。

  さらには、ケースファンに対するファンコントローラーの関係で言うならば、ファンの進歩もめざましく、汎用ファンメーカーの軸受け機構の改良、およびインペラのデザインの改良により、形状に工夫が加えられ、低回転で風量が出せるようになっている。その上、需要の少ない高回転ファンをPCパーツ代理店がラインナップせず(メーカーカタログモデルには存在しつつ)、メジャーではないファンですらも静音モデルが当たり前となり、これ以上回転数を絞る必要性が無くなってしまった。(選べるファンの種類が豊富になった事も要因)

 さまざまな要素により、ファンコントローラーの生き残りへの道は、アクセサリー的要素としての存在価値を見いだす時代へと流れて行く。(少々大げさではあるが、、、)

KS01-SL Modern-V FM-06
まさに現代っ子でありながらもある意味正統派ファンコンであるサイズ「風サーバー」は2009年3月にリリースされた4chモデル。VR方式(電圧レギュレーター)で幅広いレンジ(3.7V〜12V)に対応する。実勢価格は約6,000円 AeroCool「Modern-V」(サイズ扱い)は、5.25インチベイを2段使用し、大型カラーLCDパネルを装備する多機能モデルで、アクセサリー要素が漂う逸品(2008年6月発売/実勢価格5,000円) AINEX「FM-06」は、4ch制御に加え、温度表示、回転数表示の他、カードリーダー、eSATAポートなどあらゆる機能を搭載する、マルチファンクションパネル。ファンコンだけでは飽きたらず、このように考え得る機能をすべて搭載してしまう製品は非常に多い(2009年4月発売/実勢価格4,500円前後)
ZM-MFC3 一世を風靡した内蔵型ファンコンのNewモデルとして以前取り上げたZALMAN「ZM-MFC3」。ちなみに前作「ZM-MFC2」マイナーチェンジ版「ZM-MFC2/V2JP」に関しソフトに触れたが、実はなにも変わってはおらず、結果的に値上げされただけだというお話は、ただの一般論ではないようだ(2009年5月発売/実勢価格8,000円)


■技術の進歩で需要が減ったファンコントローラーの行く末を案じる 

  そもそも自作とは、どうしても避けて通れないプロセッサやビデオカードの熱源に対する永遠の課題も立派な楽しみのひとつであり、誤解を恐れずに言うならば、IntelやAMDを初めとする大手が“へんなもの”や“無理難題”となるものを作れば作るほどに、難易度の高いパズルを攻略するが如く市場はそれにチャレンジを挑んできた。そのチャレンジャーはユーザーだけでなく、対峙する周辺パーツメーカーも同様で、高冷却・低騒音値のCPUクーラー、エアフローが良好なケース、またはファンコントローラー等を開発し、進化させてきたのである。まさに切磋琢磨という言葉が似合う関係にあると言える。

 そして今、元来歓迎されるべき技術の進化からユーザーの使用環境も改善され、“へんなもの”からくる“無理難題”が少なくなってしまった事で、自作の楽しみのひとつが奪われてしまった気がしてならない。
 必ずしもそればかりが原因ではない事をお断りしつつも、今回の俎上に挙げた「ファンコントローラー」は、かつての「時代の寵児」となってしまうにはあまりにも寂しい気がする。
 これからの行く末を案じつつ、ファンコントローラーに対してはエールを送りたいと思う。

TEXT:G&D matrix 松枝 清顕


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