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エルミタ的「一点突破」 CPUクーラー編 Vol.1
「Scythe 夜叉」検証
2010年2月12日 21:30
TEXT:G&D matrix編集部 松枝 清顕
 
重要な“脇役たち”を検証するエルミタ的「一点突破」

 エルミタージュ秋葉原では、これまで数々のPCパーツレビューをお届けしてきた。ただ振り返ればどうしてもカテゴリが偏りがちで、製品の選定が市場での注目度に左右されている感は否めない。当然の事と言えばそれまでだが、注目を集めることのなさそうな一見脇役的なパーツも、自作における重要な構成部品は多々存在する。それらひとつひとつにも気を配って選定してこそ、自作本来の愉しみ方ではないだろうか。
 そこで主要構成部品からはやや外れる(かもしれない)部類のパーツを徹底的に検証してみようというのが新企画「エルミタ的一点突破」だ。
 記念すべき?シリーズ第1回の俎上には、選択肢豊富なCPUクーラーを取り上げる。
毎年リリースされるクーラーの新製品は、実は電源ユニットやPCケース等に匹敵するほどの数。CPUを安定稼働させるための冷却を担う重要構成部品で、趣向を凝らしたデザイン性の高いモデルから空冷・水冷等の冷却方法に至るまで、検証するに値するたいへん奥の深いパーツのひとつだ。

 というわけで、今回は2010年2月にリリースされた株式会社サイズ(東京都千代田区)の「夜叉」(型番:SCYS-1000)をチョイスした。サイズと言えば、その独創的オリジナリティが世界的に注目を集める屈指の国内PCパーツメーカーで(製造は海外)、第1回には相応しい選択ではないだろうか。
 早速検証に入る前に初回という事もあり、まずはエルミタ的「検証レギュレーション」からご紹介しよう。今後もそのレギュレーションの下で、数々のモデルをテストして行く予定。乞うご期待。



ヒートシンクの特性を再考しておく

 形状やエアフローデザインなど、CPUクーラーの素材は千差万別。主には銅とアルミニウムで構成されている。まずは以下表で、両者の特性を確認しておこう。

素材別に見る熱伝導率
素材 熱伝導率 CPUクーラーにおける主な用途
398W/mK ベース部(一部放熱フィン)
アルミニウム 237W/mK 放熱フィン、ベース部

 TDP100W超え初期の頃は、全銅製のトップフロー型CPUクーラーがリリースされ、人気を博した。これは熱伝導率がアルミニウムよりも優れている事から各社が採用した当時最良の選択であったが、静音重視による搭載ファンの大口径化とPCケース内部レイアウトの進化から、主流がサイドフロー型に移行され、ヒートシンクの大型化に伴い銅自体の重さがネックとなり、アルミニウムと銅のハイブリッド構成によるモデルが多くリリースされるようになっている。
 理論上、熱移動が速い銅は、CPUコア部に接触させる受熱ベースに用いられ、放熱能力に長けたアルミニウムをフィンに使用する事が現在の一般的CPUクーラーとなっている。また熱移動を助けるアイテムとして用いられるヒートパイプは、受熱ベースからの熱移動を素材特性だけに頼る事無く、半ば強制的に行う補助的役割を担い、封入された純水等の循環を利用し、さらに効率よく冷却を行う事を目的として用いられている。

 ここまでヒートシンクの基本的な仕事をおさらいしたワケだが、本当に理論上の特性は活かされているのか?またはヒートパイプなど無くても良いのではないか?という少々斜め目線の疑問についても、回を重ねる毎に検証できればと考えている。

昨今のCPUクーラーで多く採用されているヒートパイプダイレクトタッチ方式。本当にその効果があるのか?等も以後テストしてみたい


エルミタ的レギュレーション
CPUクーラー計測環境および計測方法

 お断りするまでもなく、CPUクーラーのテストといえば、冷却能力が主題となる。ただし、実際にCPUクーラーを稼働させるPCケース内環境はさまざまで、イコールコンディションを定義する事は事実上不可能だろう。そこでエルミタ的レギュレーションを以下通りに決め、今後のテストでも可能な限り同一環境で行う事で、これをひとつの“基準”として参考にして頂ければと思う。
 またテスト環境となる室内温度は、この企画を続けて行く限り、常に変化する事になるわけだが、その点は気にせず、柔軟にテストを繰り返す事とする。

1.マザーボードはケースに組み込まない状態で計測する
(ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けない状態で、できる限りCPUクーラー本来の性能を見る)
2.マザーボードなどの各種設定はデフォルトのまま行う
3.CPU全コアに100%負荷をかけ、5回テストを行う
(計5回テスト中、平均値のスコアを掲載)
4.騒音値は、ファンから10cmの距離で計測
(騒音計はファンと垂直方向に設置)
5.高負荷状態は「OCCT 3.1.0」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)
6.コア温度およびファン回転数は「SpeedFan 4.40」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)

 以上6項目がCPUクーラーテストにおける、エルミタ的レギュレーションとした。なお4.騒音値については注釈が必要だろう。
 このテストでは搭載ファンから10cmの距離で計測を行った。サイドフロー型、トップフロー型いずれもファンとは水平位置に騒音計を置き、5回計測での平均値を採っている。またCPUクーラーの近くではVGAクーラーのファンが稼働しており、当然その騒音も拾うことになる。パッシブモデルの使用も検討したが、多くのユーザーはファン搭載モデルを使用すると想定し、実際の稼働状況に近い数値を採る事とした。
 CPUクーラーは通常フタを閉めたPCケースの中で稼働させる上、ケースから耳の距離もある程度確保されている。よってこの測定方法も一定の基準を作った中での測定値となる。なお実際のファン動作音は、一般的にファン単体の動作音が表記されており、ヒートシンクにエアフローが抜ける音(風切り音など)などは考慮されていない。さらに実際の耳の聞こえ方には、高周波帯域、または低周波帯域いずれかが極端に「耳障りになる」と感じる等の個人差がある事もお断りしておく。(つまり究極の所、実際に自分の耳で聞いてみるしかない)

検証使用機材
CPU Intel「Core i5-750」 Lynnfield
(2.66GHz/TB時最大3.20GHz/TDP95W)
マザーボード GIGABYTE「P55A-UD3」
(Intel P55チップセット/ATX)
メモリ OCZ「OCZ3P1333LV4GK」
(1333MHz/PC3-10666/CL 7-7-7-20/1.65v)
SSD OCZ Vertex Series 120GB(SATA2/2.5インチ)
VGA XFX「HD-567X-YNFC」
(Radoen HD 5670 512MB DDR5)
OS Windows 7 Ultimate 64bit
放射温度計 AD-5611A(非接触型温度計)
測定範囲(D/S比)11:1
騒音計 TM-102(国際規格IEC651 TYPE2適合)
検証ツール
高負荷状態 OCCT 3.1.0
温度/回転数 SpeedFan 4.40




「基準モデル」としてIntelリテールCPUクーラーを計測

 ひとつの指標としてリテールBOX同梱純正CPUクーラーの検証を行った。今後これをひとつの「基準モデル」としたい。
 なお本稿では、Intel Core i5-750+Intel P55チップセットの組み合わせをチョイスしている。これを選択したのは、そこそこの人気と2万円を切る販売価格の手頃感からという理由だ。また高いTDPのCPUを用いたテストは数多行われており、多くのモデルでは恐らくリテールクーラーと大きな差が出てしまうと想像できるため、過剰な差を見るのではなく、より現実的なレベルでの性能を知る事がこの企画の趣旨となっている事をご理解頂ければと思う。

 また「エルミタ的レギュレーション」でも触れたとおり、可能な限りイコールコンディションでの計測を行いたいため、室内温度が上昇する季節には、再度純正クーラーのテストを行い、アップデートを試みる予定。
Intel純正クーラー Intel純正クーラー
ファンはオープンフレームにつき、インペラの最大値を実測。約76mmだった。なおフレームの最大部直径は91mm。一般的に表記される外形寸法は、φ91×H45mmで、重量は253g。ちなみにケーブル長は240mm コア接触部には銅が埋め込まれている。受熱能力を高め、360度アルミ放熱フィンに熱を拡散させる核となる役割をも果たす
Intel純正クーラー Intel純正クーラー
ヒートシンクファン搭載面。中心部の銅は直径19mmの円でえぐられている。恐らくは受熱からアルミフィンに拡散させるスピードに貢献しているものと思われる ヒートシンクコア接触面。銅柱の直径は28mm。Intelでは汎用クーラーにありがちな銅プレートではなく、銅柱をアルミフィンに埋め込む方法を採用している
Intel純正クーラー Intel純正クーラー
フィンは中心部から十字に4ブロックで構成され、放射状に各ブロック14枚のフィンが伸びている。さらにフィンはY字に枝分かれする事で、放熱面積をより多く採る工夫がなされている ヒートシンクは段差が設けられている。小さい方の直径は53mm。大きい方は直径87mm。段差を付ける意味はSocket周りのコンデンサを避けるためで、規格で決められている。なおヒートシンクの重量は160gと意外に軽量
Intel純正クーラー Intel純正クーラー
搭載されるファンは、NIDEC「F90T12MS1Z7」。ヒートシンク自体にはIntelのパーツナンバー「E41759-002」が与えられている。ちなみにNIDECの他、DELTAやFOXCONNも同じナンバーで製造が委託され、TDP95/87W用にはこの3社がサプライヤーとして指定を受けている 「Reference Fastener」という歴とした名前を持つ通称“プッシュピン”。Intelのパーツナンバーは「C33390-002」で、当然の事ながら各部位のサイズは厳格に規定が定められている

テスト
テスト

Intel純正クーラー

・実際にCPUを稼働させた時のヒートシンク温度を計測してみたところ、以下通りの結果となった。なお計測は@の部位で行っている。(室内温度18℃)

アイドル時 20.9℃
100%負荷時
(15分経過)
31.9℃



ラウンド形状のトップフロー型としては典型的な優等生

 今回は第1回という事もあり、Intel Core i5-750に同梱されている純正クーラーのテスト結果を先に紹介しよう。
 自作派の多くは未使用のままリテールBOXの中にしまいこんでしまう純正クーラーだが、小型軽量でありながら、そこそこのパフォーマンスを持ち合わせている。

 確かに超静音または高冷却とは言えないものの、アイドル時の36.8dBAは生活騒音の中に紛れれば、耳障りとは言えず、高負荷時45.3dBAも個人差はあれど、我慢できないレベルまではまだ若干の余裕は残されている。また肝心な冷却能力で言えば、高負荷時65℃レベルで、モデルによってはノートPCのCPUもこの程度の温度まで上昇する。
 いずれも精神衛生上の問題さえ無視すれば、Intelが運用を認定した純正クーラーだけに、十分使用に耐えうると言えるだろう。360度ラウンド形状のトップフロー型の特性を無駄なく発揮させている点は、一昔前の純正クーラーに比べれば格段に進化している。

 今後続けて行く予定の汎用CPUクーラーに対する基準モデルとして、意外に強敵になるかもしれないが、結論は各モデルの結果を見てから、個々にご判断頂ければと思う。

次のページからは、いよいよ第1回の本命、サイズ「夜叉」のテストを行う。同社が最も得意とする極薄アルミニウムフィンを進化させ、さらにギミック付きの搭載ファンが、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
 

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