エルミタ的業界インタビュー「オピニオン」 Vol.11 

自作ユーザーが満足するBuilt To Orderとは? BTOのサイコム訪問記

2012.10.01 更新

文:GDM編集部 Tawashi/絵踏 一

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自作派好みの人気パーツを扱うサイコムBTOの今

今回、お話を伺うことができたのは、サイコム代表取締役の河野 孝史氏、広告・マーケティング担当の杉山 茂氏、プロダクトマネージャーの山田 正太郎氏。そして後ほどご参加頂く工場長の中谷 誠吾氏の計4名。いずれも、それぞれの立場からサイコムのBTOにかける熱い思いを語ってくれた。

代表取締役の河野 孝史氏。その温和な語り口からは、1人のPC好きとしてのオーラが漂う

  • 編集部:
     はじめに、2012年も後半に入りましたが、サイコムさんの今年上半期はいかがでしたでしょうか?
  • 河野氏:
     正直に申しまして、あまり良くなかったですね。特に3~4月は注文数が落ちました。Ivy Bridge登場直前という点を考慮しても、昨年はご存知の通り震災があった時期ですから。その昨年と比較しても上半期は良くなかったですね。その後、7月くらいからようやく回復してきたように感じています。
  • 編集部:
     秋葉原もそのような感じです。理由はどのあたりとお考えですか?
  • 河野氏:
     これといった明確な理由は分かりませんが、Ivy Bridge登場が期待した通りの起爆剤とならなかったということはあると思います。
     もうひとつは、ここまで高性能なPCが皆に普及すると、性能が頭打ちのぶん、買い替えの動機付けが弱くなるという点でしょうか。当社のような規模のメーカーの場合、価格重視の大手さんとはやはり市場へのアプローチが異なります。そこで、ハイエンドなPCを求める方にどうすればお届けすることができるのか、というのが今後のミッションかと思っています。
     さらにもうひとつ気になっていることがあります。弊社は通販ですから、サイトを訪れるユーザーさんの動向を検索エンジンのキーワードで分析すると、1位は「サイコム」、2位は「BTO」なんですね。これ自体はずっと変化がないのですが、明かに2位の「BTO」というキーワードでの来訪数が減ってきています。この傾向から「BTO」という言葉自体のプライオリティが低下している点では危機感を持っています。
  • 編集部:
     PCの性能が頭打ちになっても、最新ゲームはスペックを引き上げる効果も大きいと思います。そういう意味では今後重要になるであろう「ゲーミングPC」というカテゴリーへ注力していくということでしょうか。
  • 河野氏:
     サイコムBTOの特徴は、やはり秋葉原などで売れ筋とされるパーツを色々組み合わせて注文できるという点。昔は自作をやっていたが今はやらない、パーツなどに詳しい方が2台目を組むのが面倒、といったある意味「自作代行」的な部分をカバーしているのかもしれません。ここはサイコムとしては非常に重要な部分ですから、今後もより一層充実させていきたいところです。
     それとは別に、先ほどの「ゲーミングPC」というカテゴリーがあります。個人的にはあまりゲームなどはやらないのですが、最近は積極的にゲームイベント等にも顔を出し、ゲームユーザーさん達が欲するPCとはどういうものかという点をじっくり見させて頂いています。さらに、ここにいる山田のようなゲームにも詳しい人材を新たに加えることによって、今まで提案できなかったような「新しいゲーミングPC」をお客様にお届けできる体制ができあがりつつあります。

従来のサイコムとは異なる「ゲーミングPC」展開について

先日、某大手代理店から転職してきたばかりのプロダクトマネージャー山田 正太郎氏。自作PC業界はもちろん自身もプレイするというPCゲーム分野への造詣も深い

  • 編集部:
     なるほど。それで最近は「ゲーミングPC」が立て続けにリリースされたのですね。
  • 山田氏:
     はい。ここ2カ月で4モデルのゲーミングPCをリリースしました。メインページが「ゲーミングPC」だらけになったので、代表の河野には「ゲーミングPC専門になったと思われたら困る」と言われてしまいましたが(笑)。
  • 編集部:
     そのゲーミングPCシリーズですが、MicroATXやMini-ITX対応等のコンパクトなモデルが目立ちます。
  • 山田氏:
     あたり前とまでは言いませんが、ゲームイベントに参加されているユーザーさんは必ずしもパーツに詳しいわけではありません。ゲームはしたいけれど、どのパーツが最適といった事はあまり分からないし、そもそも興味がない。そんなユーザーさんたちは、どういった「ゲーミングPC」を欲しがっているのだろうかと考えた場合、なるべく小さいほうがよいのではないかと思ったわけです。パフォーマンスは必須ですが、やはり小さいに越したことはないだろうと。
サイコム一押しという水冷採用のCube型ゲーミングPC「G-Master Cutlass-ITX」。BitFenixのCube型Mini-ITXケース「Prodigy」を採用したゲーミングPCの新製品で、水冷標準搭載というBTOでは珍しいスペックを実現する現在売れ筋のモデル
製品情報: http://www.sycom.co.jp/custom/gmaster_cutlass_itx.htm

  • 編集部:
     ただエルミタでもレビューしましたSilverStoneの「FORTRESS SST-FT03-MINI」などは、小さいですが非常に独特な構造です。組み込みが難しいわけですから、BTOラインナップとしてリリースするには検証作業や日々の組み込みが大変ですよね。
SilverStoneの“ゴミ箱”Mini-ITXケース「SST-FT03-MINI」とCORSAIRの簡易水冷キット「CWCH60」を採用した「G-Master Vanguard-ITX」。ケース内部は特殊な構造のため、組み込む際には多少のコツが必要。それでもサイコムではBTOの筺体に採用している
製品情報: http://www.sycom.co.jp/ custom/ gmaster_vanguard_itx.htm

  • 山田氏:
     ええ、ハッキリ言って苦労しました。あのサイズのケースにGeForce GTX 680搭載グラフィックスカードを取り付けるなど、今までのサイコムBTOなら絶対にやらないような仕様ですから。検証中に何度もボツになった構成もあります。その結果のたまものですから、現在提供しているモデルは自信をもっておすすめできますよ。
  • 河野氏:
     今後はさらにPCゲームとのコラボを深めていきたいですね。まだまだ企画段階のものが多いのですが、例えばPCゲーマーやゲームイベントのスポンサードなども積極的に検討しています。
     それ以外にも比較的ニッチな市場。例えばDTM向けのPCなどは、ユーザーさん側でパーツの選定を行うのではなく、こちら側から最適な製品をパッケージとして提案するといったことも必要かと思っています。
組み立てスペースの横にはCPUやグラフィックスカードなどがぎっしりと並ぶ。在庫の量は非常に多いが、これが納期の短縮と厳守に繋がっているというわけだ
純正クーラー以外にも、有名処のCPUクーラーが大量にストックされている
注文を受けたBTOは基本的に担当者1人が最初から最後まで“自作”する。狭い筺体内での配線などは見ていて感心してしまうほど。手際良く作業は進んでゆく

ある作業途中のデスク。自作するには最適な環境が構築されているのがわかる。我々が自宅で作業する際にも大いに参考になる1枚だ

完成したPCは決められた順番で、動作確認を行うブースへと移動する仕組み

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